ぐるりな訪問看護師もいいもんだ

人生に関わる仕事はおもしろい

看護学生という苦行

 

看護師になりたくてなったわけでも無かった。

 

 


何となく候補には上がっていたような気もするけど、憧れもなければ現実味もなかった。

 

いつの間にか(なるんだろうな)と思うようになり、選択を迫られる頃には他に進路が思い付かなかった。

お金もなかったし、選択の余地も無かった………のかもしれないけどそれは言い訳だな、うん。

 

 

そんなだから、入学してからはえらいきつかった(笑)

 

そもそも頭がいいほうではない。

国語は好きだが漢字は覚えられず壊滅的。

英語はb動詞で躓き、文法を無視した出川イングリッシュだけが得意になった。

数学に至っては、算数止まり。分数の掛け算でパラレルワールドを垣間見た気分になり、未だに指を使って足し算してる。九九もギリ7段まで(笑)

 

そんな私が運良く看護学校に入学。

これぞまさに棚ぼた。

 

それまで勉強らしい勉強をしたこともなく、のらりくらりと適当にやって適当に棚ぼたな運で生きてきたんだということを、身に染みて知ることとなった。

 

 


大学付属の専門学校。

病院(本院)と医学部の敷地内にあり、授業によっては医学部と合同だったり医学部の先生が講師だったりもする、何とも中途半端な存在(と、当時は思っていた)の学校。

 

専門学校なので3年間のカリキュラム。

なのに「4大かよ(T^T)」と呟きたくなるほど科目も盛り沢山。

毎週のように何かの科目の試験があり、落とすとアウト。

再試もあるけど、そうこうしてると別の試験がやってくる。

体育(テニスかバレー)、英語(一般とは別に医療英語もあった)、ドイツ語なんかも何気に組み込まれ、生化学、公衆衛生学、倫理、法医学、解剖学等々、それっぽい科目とごちゃ混ぜだった。

科目、多すぎじゃね?

と愚痴りたくなるほどの量で、いったい自分が今何を学んでいるのかさえわからなくなることもあった。

 

「殺す気か」と内心悲鳴を上げていた。


解剖学は医学部と合同の事も多く、すげぇ恐い教授(女性)にドヤされながらリアル人骨セットを組み立てたりした。

解剖実習も医学部生二人で1体くらいの配置(そこに看護学生3人くらい)なので実習室にずらぁ~っと数10体の献体が並ぶ中、チビりそうになりながらやった。

病人すらほとんど相対していない1年生。

検体への尊厳とか、理屈ではわかっていても気持ちが追いつかない。

「丁寧に扱いましょう」と言われても、そもそも直視が出来ないんですが…教授…………。

さすがにその日のバイト先でのまかない(ビーフシチュー)は食べられなかった。

 

 

勉強大嫌い…というか、ちゃんと勉強したことないんでやり方もわからず日々テンパっていた。

 

んが、各論実習(1年かけて各科を回る)に出てみて自分の甘々さ加減を本気で知った。

 

座学の時は「殺す気か」だったものが

実習中は「殺される…」になった。

 


ただでさえ病院(病棟)なんて免疫なくて(健康なんで)、独特の匂いと雰囲気に飲まれそうにビクビクしているところを、現場のベテランナース達にこてんぱんにされる。

 

毎日、いや毎時間ダメ出しの連続。

誉められることはまずない。

勇気を振り絞って何か言うと

「で?」「だから?」「根拠は?」「それだけ?」みたいなコールドな一言で片付けられる。


規定の記録物も膨大なのに、連日「それ、明日までにレポート提出して」と、数件のレポートが上乗せされる。

勿論、提出したレポートもダメ出しされまくる。

実習中は週末も含め、図書館にお籠り状態。

敷地内に大学の大きな図書館があったことが唯一の救いだった。

 

実習中は4日でトータル8時間くらいの睡眠時間。

要領のいい学生は眠れていたようだが、もちろん私は要領がすこぶる悪く、あっという間に朝日が昇る毎日だった。


思考回路も全く素直ではなく、指導者の思惑通りには結果を出せないためキレられる事も多々あり。

院内で

「あんたみたいに扱いづらい学生は見たことない!!」

と大声で怒鳴られ、聞いていた入院患者(受け持ち患者でもなんでもない)に慰められたこともあった。


各論初っぱなに受け持った患者はたった1週間で亡くなり、命の灯火の儚さに動揺しまくり。

 

小児科の担当患児には

「学生さんブスだから嫌い」

と鼻くそを付けられ、白衣に油性マジックで落書きされ。

 

消化器内科では受持ち患者の隣のベッドの患者(その筋のお方。いわゆるや◯ざさん)にベッドに引きずり込まれ押し倒され。

※彼はその後強制退院

 

日本語も英語も通じない担当患者にパンフレットを作るため中国語を調べまくり。

(もはや何の実習だかわからない)

 

初の本物(?)採血は、車イスに座っているおばぁちゃんの手背から採らされるという拷問。

※今どきは実習生が針を刺すことはないらしい

 


棚ぼたな人生は遥か彼方に追いやられ…。

 

 

 

生まれ変わっても、絶対看護師にはならないだろうなぁ。


つか、なれないだろうなぁ。

 


「殺される」と思うほどしんどかった実習。

厳しすぎると不満だらけだった。

「辞めてやる」が口癖だった。

 

 


でも、看護師になってから徐々にわかった事がある。

あれは私に必要だった。

社会人としても、医療職としても、とても大事な事を学んでいたんだと思う。

それが何なのか上手く表現は出来ないけれど、看護師という仕事への基本的な向きあいかたというか、覚悟というか…う~ん。

深い部分で今の私を支えてくれている何か…みたいな?

 

ま、そんな恐くなくってもいいじゃん……とは未だに思うけど(笑)

 

 

 

あぁそうだ。

みんながめっちゃ勉強している冬休みじゅうバイトに明け暮れ、同期に「あんたが受かったら私達の努力は何だったんだって思うよ」とブーブー言われたにも関わらず、国家試験に受かっちゃった時は(棚ぼた再来🎵)と思ったことは誰にも言わなかった。