患者におんぶされている訪問看護
頚髄損傷の女性。
高齢者だけど、とても若々しい雰囲気を持つ彼女。
四肢麻痺があっても自立心がとても高く、出来ることは自分で。
工夫に工夫を重ね、今の生活がある。
長い間、重度の褥瘡(床ずれ)との戦いがあってようやく最近ゴールが見えてきた所。
毎日看護師が訪問を続け、ポジショニング、除圧、栄養、保清、処置……これまた工夫を重ね試行錯誤。
彼女は寝たきりではなく、非常に活動性が高い生活で、やり過ぎと思える程の自宅リハビリを毎日続けています。
褥瘡発生要因の模索が大変でした。
次から次に問題が発生。
スタッフ一同、泣きたくなるほど悩んだ時期もありました。
「お願いだから、エアマットの上でじっとしてて…。」と思うことも。
今はスゴいスピードで改善に向かっていて、私の心境にも余裕が。
そんな今日この頃、訪問すると彼女はテーブルに向かい日課の作業療法中。
言うこと聞いてくれない指を懸命に使い、かまぼこの板におはじきを見事に並べきったところでした。
(きれいだな…。すんごい綺麗だな…。)
彼女が弱音を吐いたことは1度もありません。
不満を訴えたところも、愚痴をこぼしたところも、1度も見たことがありません。
いつも毎日来る看護師を気遣い、労ってくれます。
そして必ず笑顔です。
いつも満面の笑顔です。
彼女にとってリハビリは彼女を支える糧そのもの。
身体も精神も、あのリハビリによって支えられている。
彼女が褥瘡に負けて、リハビリを諦めてしまわなくて良かったと、今更ながら痛感しました。
私達は毎日訪問し、労われ、看護ケアをしているのだと信じていましたが、彼女の精神力におんぶされ、看護ケアをした気になっていたんだな…。
彼女は何も言いません。
でも、伝わるものがありました。
これからは、おんぶされずに彼女の隣を一緒に歩きたい。
私の自立支援はまだまだ遠い道のりの先にあります。