ぐるりな訪問看護師もいいもんだ

人生に関わる仕事はおもしろい

退院前カンファレンス

昔、がん末期のかたが退院するからと、病院から依頼を受けた事があった。

 


本当はもう一手、治療選択ができるのだけれど本人が食べないので状態が良くない。

家に帰れば食べるようになるかもしれない。

だから家に帰って食べて、状態が良くなったら(体力がついたら)その一手にチャレンジしようよ…的な話しだった。

 

 

退院前カンファレンスに行くと、退院支援ナース(医師不在・本人不在)が訪問看護プランを練り上げていた。

 

麻薬の貼り薬を使う。

妻は認知症だから訪問看護で貼り替えてよ。

毎日時間固定での訪問は難しいでしょ?

だから3日おきでいい貼り薬に変更しといてあげる。

どう?私すごい在宅に気配りしてるでしょ?

…風な、どや顔提案。

 


いや。

3日おきだと曜日固定が出来ないから逆に面倒です。

毎日交換のままでいいですよ。

ご家族に協力してもらいましょうか。

帯(毎日固定時間で入る)のヘルパー訪問時間に貼り薬を交換にして、ヘルパーさんに促しと確認してもえませんか?

どうですか?ケアマネさん?奥さん?

 

※ ちなみに麻薬の貼り薬をヘルパーが交換する(貼りかえる)ことは、許可されていません。

 


たぶんここで退院支援ナースはカチンときたんだと思う。

その後の、ぐるりさんへの当たりは強いわ怖いわ(笑)


が、実はぐるりさんのほうが先にカチンときていたのかもしれない。


ペラペラと退院支援看護師が喋る間、【貼り替える能力すらない】とは思えない奥さんと娘は、黙って座っている。

話し合いに参加しているというよりは、放置されてる。

何となく府に落ちていないというか、納得してない雰囲気があった。

そして退院支援ナースの饒舌な話は、同業者であるぐるりさんに対して専門用語込みで口早に話しているため、半分以上話が理解出来てはいなさそうな感じ。

 

そもそも家族との事前の話し合いがあったとしても、病院プランありきの話であって「相談」ではなく「通達」系の話しだったんだろうなと。

 


「食事量は?」

「排便は?」

「本人の希望は?」

などなど聞いてみたが、電子カルテをチコチコいじりながら

「あぁ~どうだったかな?」

と、全く要領を得ない。

 


色々カチンときていたんだと思う。ごめんなさいませ。 

 

 

退院後、

薬の貼り替えはヘルパーがきっちり支えて下さり問題にはならず。

でも、病院の思惑どおりにいくはずもなく。

食べない。

うなぎやらそうめんやら、本人の好きなものを奥さんが準備してくれたが、いかんせん食べない。

冗談かと思うほどちっちゃい塩握り🍙1個だけ。

でも、寝たきりだけどけっこう元気。

想い出話しは毎回満開🌸

起き上がれないけど、人生の武勇伝なんか語らせちゃうと止まらない。

笑顔が素敵なおじいちゃん。

 


「具合が悪いって訳じゃない。お腹が空かないんだよ。」と笑って言う。

理解がないわけじゃない。

栄養状態が改善しないと次の一手に挑めないことは重々承知。

奥さんは

「本人の好きにしたらいい。ここまで連れ添ったんだから最期までつきあうよ」

娘は

「苦しんでないからこのままでも良いのかなとは思うけど、可能性のある治療があると言われてしまうとやらないわけにはいかない気がする」 

 

三者三様、どれも気持ちはよくわかる。

 

本音を言うと、

「食べられるようになったら」

「元気になったら」

なんていう、体調が改善することを前提にして退院に繋げている病院がいかん。

可能性はいい方も、悪い方も正しく整理して説明するべきだ。

 

 

 

結局家族で話し合い、再入院になった。


「こんなになるまで放置して、ぐるりは患者を見殺しにするつもりなのか!!」

と、退院支援ナースはケアマネに激怒したらしい。

 


彼は「もう一手」に挑むことなく病院で彼岸に渡ったと聞いた。 

 

 

たらればだけど、今になって思うことがある。

退院前にもっと現実的な説明や選択肢を伝えるために、外部(在宅)の看護師ができることが沢山あると思う。

退院前にたった1回会うだけじゃなく、もっと本人や家族の思いを引き出す関わりができるのは看護師なんじゃないかと思う。

病院だから、

医者だからと、

遠慮していてはいけない。

なぜなら、患者の人生そのものに関わる仕事だから。

 

 

それが迷いなくできる看護師になりたいと、ずっと思っている。