ぐるりな訪問看護師もいいもんだ

人生に関わる仕事はおもしろい

みんな誰かのぐるり

訪問看護師になって20年くらいが、いつの間にか過ぎてしまいました。

ついこの前始めた気分ではあるのですが、そういやあの時はまだ独身だった(笑) そういや娘は成人してるわ(笑)

 

そんな呑気なぐるりさんですが、10年以上前からとても気に入っている言葉があります。

「いつか自分でステーション立ち上げたらこの名前にしたいな」とまで思っていたのですが、立ち上げるなんて夢のまた夢(熱意が無かっただけですが)。
まぁ、いつかどこかで何かに使おうと心の隅にしまっておいた言葉。
それがこのブログでようやくお披露目となりました。

 

そう。
「ぐるり」です。
ぐるりと言えば山手線…という感じではありますが。

 

 

まだ私が訪問看護師としては「若手」だった頃。
とある高齢女性のもとに訪問しておりました。
彼女はまだ元気で、御主人を亡くされたばかりでしたが一人暮らしを上手に楽しむ朗らかな方でした。
んじゃ、何で看護師が訪問するの?そう思いますよね。
このかたの所には月に1回、爪切りしに行ってたんです。足の爪。
嵌入爪(巻爪)が酷くて、何度も炎症を起こし歩くのが大変になる経験があった彼女。「足だけは怖ぁて自分では切られへん」と、訪問看護を利用されていました。

 

「先生に足の爪切らせるの、ほんまに申し訳ないわぁ」と、毎度訪問前には自分で足を洗いピッカピカにして待っててくれる彼女。
「先生とちゃいますよ。ただの看護師です。」

 

彼女、京都の出身です。ですが「京都は嫌い」と大阪に移り、歳を重ねてから子供が住まう関東に来られました。

バリバリの関西弁ですが、本人はけっこう標準語いけてると思っているくちです。

そして私は生まれこそ違いますが大阪で幼少期をすごしたもので、ついついつられておかしな喋りになってしまいます。

 

ちなみに彼女になぜ京都が嫌いなのかたずねると「京都はえげつないのよ。ほんまにえげつないわぁ。」と、故郷をぼろくそにけなしておりました(笑)

 

彼女はとてもおしゃべりが好きで、私がパチパチ爪を切っている間休むことなく話続けてくれます。ゲラゲラ笑いつつ、時には(やばい。爪切り失敗するとこだった)と冷汗をかきつつ。毎回とても楽しい思い出があります。

 

そんな彼女がよく口にする言葉がありました。

「ぐるりが心配するから、しっかりせなあかんのよ」

「もう、うち(私)のぐるりがうるさいの」

「先生のぐるりはなんて言うてはるの?」

 

私は「ぐるり」という言葉をこんな風に使ったことはありませんでしたが、違和感なく聞き取っていました。

 

「ぐるり」は周辺とか、周囲という意味がありますがこういう風に使うとき「自分を取り囲む、支えてくれる人たち」というニュアンスが強くなるような気がします。

ぐるりは「家族・親族」に限定している時もあれば、ご近所さんとか知り合い、関係者みたいな広い意味で使われる時もある。

 

私はあなたのぐるりだし、あなたは私のぐるり。

 

方言(なのかな?)の独特で柔軟な表現がとてもうまく調和している感じがする言葉。

 

そしていつしか彼女のぐるりに時々私が含まれるようになり、なんだかとても嬉しくなったのを覚えています。

(あぁ、その人にぐるりの一人だと認識してもらえた時にやっと仕事になるのかもしれないなぁ)なんて、ぼんやり考えました。

 

ちなみに、学生や新人ナースと同行訪問した際に「ぐるり」が共通理解できる言葉じゃない(方言だ)ということに、初めて気づいたりしました。

 

 

あれから10うん年。いつの間にか私の中ですっかりお気に入りの言葉となった「ぐるり」。

でも、標準語でしゃべっているとどうにも使う機会のない言葉。

 

ぐるり、ぐるり、ぐるり。

 

何周も回って、最終的にブログのネーミングに使うことと相成りました。

 

今後とも「ぐるりさん」を宜しくお願いします。

 

 

あなたは私のぐるりだし、私はあなたのぐるりになりたい♡