100歳:人生における先生
訪問するとベランダで布団を取り込んでいる。
「格闘していましたよ(笑)」と。
ベランダに干してあるミカンの皮。
埃を取ってからネットに入れて入浴剤にするそう。
「昔から1番風呂が嫌いでね。
12も離れた兄が入ったあとが、お湯が柔らかくて好きだったのよ。
今は一人だから、ミカンが兄の代わり。」
ミカンの皮は昔、薬だったんだって。
干して乾いたものを粉にして、ご飯にかけたり白湯で溶いて飲んだり。
「山奥で育った皮の厚い酸っぱいのがいいの。
海辺で陽を浴びて柔らかく甘く育ったやつはダメ。
今売ってるのは商売だから食べいいように甘く美味しく皮もむきやすくしてある。
昔は実を食べなくても皮は食べろって言われた。
神様がちゃんと作っていたものを人間の都合で壊しちゃったのよ。
だからダメなの。
酸っぱいものは身体が柔らかくなる。
お湯と一緒。
身体が柔らかいと、頭も柔らかくなるの。」
子供が産めなかった彼女は「世間様に恩返しがまだ出来ていない」と言う。
「ミカンの話、私の子供に伝えます。大切な意味があると思うから。」
「そうしてくれると私の記憶が後世の役に立つわね」
小学校で教え込まれた校訓を今も胸に生きていると、彼女は言う。
スラスラと唱えるので、書いてもらった。
トイレに貼ると言ったら、涙が出るほど笑いながら
「それはいい考えね。嫌でも読むわ。」
① 独立自治
自分のことは自分でせよ
② 堅忍不抜
我慢強くせよ
③ 規律
きまりよくせよ
④ 礼節
礼儀正しくせよ
身が引き締まる訪問だった。
私の自転車が見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。
ありがとうございました(^ー^)
また行きます。