ぐるりな訪問看護師もいいもんだ

人生に関わる仕事はおもしろい

Social determinants of health〜健康の社会的決定要因

数年前まで自転車で訪問に回っていた私は、公園で昼ごはんを食べることが多かった。
 
仕事の合間。訪問エリア内の公園。だいたい4ヶ所。
 
雪の積もった日や、炎天下でも。
 
30分弱の時間。
植物を眺めたり、鳥を観察したり。
色んなものが見えた。
 
 
お昼時に公園にいると、ある特定の職種の人とお目にかかる。
子供はめったに遊んでいない。
公園にいるのは工事現場の交通整理なんかをしているおじちゃん達。
 
ベンチに一緒に座ってご飯を食べた。
 
おじちゃん達はコンビニのおにぎりとかパンが多かった。
(足りるの?)と思うほど少ない。
 
世間話をしていると
「仕事なに?それ(スクラブを見て)制服?」と聞かれる。
外回りをしている看護師だと言うと大概、なんちゃって健康相談が始まる。
血圧を測ったこともあった。
 
足がぱんぱんに浮腫んでいて、スニーカーに切れ目を入れてガムテープでとめて履いているおじちゃん。
こんなんで立ち仕事とか、しゃれにならない。
 
膝が腫れ上がってベンチから立ち上がるのが大変なおじちゃん。
それでも1日肉体労働。
 
円形脱毛が沢山あって、帽子が蒸れて痒くてしょうがないおじちゃん。
でも直射日光に当たるよりはましだって。
帽子がなかったら数時間で死ぬなって、笑ってた。
 
指先が霜焼けだらけで変色しているおじちゃん。
「風呂入ってないからきたねぇだろ?」って苦笑い。
 
50代の息子と二人暮らしで、息子は知的障害。
息子は就労支援に通っているけど、とても一人じゃ生活できない。
「二人で働いても一人分になんないかも」って。
 
血圧高いおじちゃんは
「昔っから高いから気にならないよ。強いだろ?」って。
 
 
 
「病院行ったほうがいいよ」
「休まないと倒れるよ」
「検査してもらったら?」
 
そんな言葉が虚しく響くだけ。
何の役にも立たない。
 
 
病院行く暇がない。
時給安いから働かないと。
検査だとか再診だとか、2回も3回も通えない。
毎日くったくた。それでも続けて仕事があったらラッキー。
不健康なんだろうとは思う。でも、こうして毎日生きているし身体はまだ動く。
変えられるとは思っていない。体が動くうちは働かないと。
倒れたらそれまでだ。
 
 
健康保険証を持ってない人もいるんだろう。
そして、みんなそこそこのお歳。
 
 
自分が偉そうに給料もらいながら毎日やっている仕事が、茶番劇のように思えた。
 
保健師の領域なのかもしれないけど。
だから何だ?
 
 
当たり前の仕事が
当たり前じゃなくなった。
 

 
 
――どうしてジャクソンは病院にいるの?
それは、彼の足にひどい感染を起こしたからだよ。
 
――どうしてジャクソンの足には悪い病気があるの?
それは、彼が足を切ってしまって、そこから感染を起こしたんだよ。
 
――どうしてジャクソンは足を切ってしまったの?
それはね、彼が、アパートのとなりの廃品置き場で遊んでいたら、そこには尖ったギザギザの鉄くずがあったからなんだよ。
 
――どうしてジャクソンは廃品置き場で遊んでたの?
それはね、彼が荒れ果てたところに住んでいるからだよ。そこの子どもたちはそんな場所で遊ぶし、だれも監督していないんだ。
 
――どうしてそういうところに住んでいたの?
それはね、彼の両親が、もっと良いところに住む余裕がないからさ。
 
――どうしてもっと良いところに住む余裕がないの?
それはね、彼のお父さんは仕事がなくて、お母さんは病気だからね。
 
――お父さんにお仕事がないって、どうして?
それはね、彼のお父さんはあまり教育は受けていないんだ。それで仕事が見つからないんだ。
 
――それはどうして?...