ぐるりな訪問看護師もいいもんだ

人生に関わる仕事はおもしろい

生活ってそんなに単純なものじゃない

短期記憶がかなり低下している独居の女性。

ヘルパー訪問も内服も忘れちゃうからと、訪問看護が導入された。

 

本人は「どうして?何も困っていませんよ?」風味。

 

とても若く見えるかたで、初めてお会いするときはご家族の方だと思い

(え~っと…ご本人はどこですか?)

と、室内を見回すほど。

室内も整然と片付いている。

 

着物が好きで、ご近所さんと出掛けるときは自分で着付け。

ストマ(人工肛門)もあるけれど、8年目のベテラン。

トラブルなく交換手技も、もちろん自立。

(ただし、長期的な管理が難しく新品のパウチが20箱ほど山積み)

 

ご家族や主治医の意向もあり、しぶしぶ訪問看護を受け入れるようになった彼女。

訪問を忘れちゃうので30分くらい前に電話入れたりしてる。

薬もお薬カレンダーにセットすればそこそこ飲んでくれている。

 

お風呂にちゃんと入れていない。

認知症だからもっと交流を持った方がいい。

そんな理由でデイサービスに通うことになった。

本人はもちろん必要性を感じていない。

ついでに私も感じていない。

 

サービス担当者会議では週1回のデイサービスの入浴時にストマ交換をすることが決まった。

今までは3日おきに自分で交換。カレンダーに自分でしるしを付けていた。

デイサービスに行く日が固定されることで交換のタイミングが3日おきではなくなる。

カレンダー記入の習慣も消えた。

 

そんなある日、デイサービスに行った翌日にストマが漏れた。

衣類が便に汚染されたが本人がそれに気付けなかったため、問題視された。

そして、月曜日に訪問看護が入り、木曜日にデイサービスに行くことでストマ交換を本人がする機会を無くした。

 

 

ここまでは担当している看護師に任せていた。

当時、管理者だった私はそのかたに訪問するのは年に3回くらいだったかな。

事務所でのミーティングのたびに「本当にこれでいいのか」と話していたが、担当看護師は疑問を抱いていなかった。

 

曜日固定でストマ交換をすることになった初日。担当看護師が不在でたまたま私が訪問した。

担当看護師には事前に「時間もないんでこっちで交換全部やっちゃってください」と言われた。

 

訪問すると、本人ご立腹。

 

3日おきの交換ができなくなったからトラブルが起きた。

デイサービスでは時間も環境も整っていないから慌てて交換することになる。

入浴してきれいにしてから交換していたのに、看護師が来てお風呂にも入らず交換するなんてやり方もわからない。

頭はバカになったかもしれないが、8年もやってきたことはまだできる。

他にもいろいろ…。

はい、ごもっとも。

 

 

結局、ほとんどのプランを覆し、デイサービスに行くことは残しつつもほぼ以前の生活に戻した。

ケアマネジャーや家族への説明、デイサービスでの対応方法の検討、習慣が消えたカレンダー記入への再チャレンジ。

いったい何に労力を注いでいるのか……本末転倒な気がした。

 

今後できなくなっていく可能性を認識することと、未然に防ぐことは同意語じゃない。

専門職の理想と、本人の理想は同じじゃない。

問題になる可能性を知らせるのが専門職で、それを問題か問題じゃないかを決めるのは本人。

 

利用者もいろんな人がいるけれど、専門職の思考を根本的に変えていかないと在宅生活を支えていくことは出来ないと思う。

 

 

ちなみに担当看護師は本人がご立腹していたことに驚愕していた。

全くそんな気配はなかったと。

コミュニケーションや関係性・信頼関係というのは「利用者と看護師」ではなく「人と人」の間にあるんだと思う。